1. はじめに
多文化化が進む現代において、学校や地域の日本語教室では、小〜高校生の外国籍児童が増えています。言葉の壁は、学習や学校生活の不安につながりやすく、子どもたちの成長や居場所づくりに大きな影響を与えます。そんな中で寄り添える方法のひとつが「やさしい日本語」です。
2. 外国籍児童が直面する課題
- 授業の専門用語や長い説明が難しい → 内容が理解できず、学習意欲を失ってしまうことがあります。
- 生活指示が理解できず、不登校につながる → 文部科学省の調査によると、学齢期の外国籍児童のうち、約6%にあたるおよそ8,000人が不就学の可能性があるとされています。
- 友達との会話が理解できず孤立しやすい → 友人関係が築けず、学校生活に不安を感じる子どもがいます。
- 日本語での理解不足が学習の停滞や不登校のリスクに → 日本語指導が必要な児童のうち、2〜3割は十分な支援を受けられていない現状も報告されています。
算数の授業での例
たとえば、小学校の算数で次のような文章題が出されることがあります。
「花壇にチューリップを3本ずつ植えます。花壇が4つあるとき、チューリップはぜんぶで何本必要ですか。」
計算自体は 3×4=12 ですが、外国籍児童は
- 「花壇」「チューリップ」といった単語を知らない
- 「ずつ」「植える」といった表現が理解できない
ために、問題文の意味をつかめないことがあります。
結果として、算数ができないのではなく「日本語がわからないから解けない」状態になってしまいます。
👉 重要なのは「算数の授業の目的は計算を理解すること」であり、余分な日本語でつまずかせない工夫です。
- 文章を最小限にする
- 言葉だけではなくイラストや図で状況を示す
といった工夫で、子どもたちは本来の算数学習に集中できるようになります。
3. やさしい日本語を使うメリット
| 効果 | 内容 |
| 理解の促進 | 難しい内容でも理解が深まり、学習に前向きになれます。 |
| 生活の安心感 | 指示や案内がわかることで、学校生活の不安が軽減されます。 |
| 自信と成功体験の積み重ね | 「できた!」という体験が増え、自己肯定感が育まれます。 |
| 友だちとの交流促進 | 日本人の子どもにとっても、様々な工夫をしながら「相手にわかりやすく伝える」練習になります。会話が自然に生まれ、友人関係を築きやすくなります。 |
| 学校・地域の包括力向上 | 異文化理解が進み、誰も取り残さない教育につながります。 |
4. 学びを支える人に必要なこと
やさしい日本語を学ぶべき中心は、先生や学習支援のボランティアなど「子どもを教える立場の人」です。
一方で、日本人の友達も「やさしい日本語マインド」を持つことが大切です。
- 伝わらないときに工夫する姿勢
- 相手の立場に立って思いやる気持ち
- 伝わらない苦しさを理解する心
これらは、多文化共生社会を生きるうえで誰にとっても大切な資質になります。
5. 活用事例
- 授業での語りかけ
難しい専門用語を分けて説明するようにしたところ、外国籍児童が発表に積極的に参加できるようになりました。 - 日常生活の指示
「プリントを提出してください」ではなく、「この紙を先生に渡してください」と伝えたところ、理解がスムーズになり行動につながりました。 - 友だち同士の交流
言葉がわからない中で努力する外国籍児童の気持ちを、日本人の児童が理解できるようになりました。その結果、外国籍児童をからかったり、ばかにしたりすることが減っています。
また、言葉が伝わらないときには、日本人の児童がジェスチャーを使ったり、言い直したりと工夫する姿が見られるようになりました。そうしたやり取りを通じて、外国籍児童も安心して笑顔で返事をするようになり、友だち関係が広がっています。
6. 地域日本語教室での支援効果
地域の日本語教室でも、やさしい日本語を活用することは大きな効果をもたらします。
- ボランティアがわかりやすく伝えることで、学習者の安心感と学習意欲が高まります。
- 地域で「日本語が通じる」と感じられることは、生活の定着に直結します。
- 支援者自身も「伝わった」という実感を得られ、やりがいにつながります。
7. まとめ
学校や地域で「やさしい日本語」を取り入れることは、学習支援にとどまらず、子どもたちの安心や交流、成長を支える大切な基盤になります。教員や支援者の実践に加え、日本人の友だちの「やさしい日本語マインド」が広がることで、誰も取り残さない学びの場をつくることができます。
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